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建設業者が知っておくべき“消費税率引き上げ”のポイント

この頃、会社の中で話題なのが「消費税率引き上げ」についてです。

2019年10月1日に予定されている消費税率8%から10%の引き上げについて、建設業界に携わる者として、2014年に消費税率5%から8%に引き上げられた時のことを思い出し知っておくべきポイントをまとめてみました。

どの時点で消費税率が引き上げられるのか?

契約日ではなく、「引渡し日」時点の税率が適用

国内取引に係る消費税の納税義務は、課税資産の譲渡等をした時に成立します。

そのため、請負契約の場合は原則として、

  • 物の引渡しを要するもの・・・目的物の全てを完成し相手方に引き渡した日
  • 物の引渡しを要しないもの・・約した役務の全ての提供を完了した日

となり、契約日が消費税率の引き上げ前であっても、引渡しが適用日以後であれば、引き上げ後の消費税率が適用されます。

消費税率引き上げにともなう経過措置!

消費税率引き上げの半年(2019年4月1日)より前に締結した契約は、旧税率が適用されます。

工事の請負の場合、一般的に契約から引渡しまでに時間がかかること等を考慮し、消費税率引き上げの半年(2019年4月1日)前に締結した工事その他請負に係る契約は、旧税率が適用されます。

よって引渡し日が、消費税率引き上げ日以降であっても、物件の契約締結が(2019年4月1日)以前であれば、8%の消費税率が適用されます。

消費税率が引き上げられても利益は同じ!

消費税率が引き上げられることによって、税込の支払金額が増えることによって感覚的に利益が下がっているように感じますが、会社の利益が下がることはありません

消費税の仕組みを正しくすることで、利益が下がることがないことを把握し「消費税転嫁」をするようなことがないようにして下さい。

それでは、消費税別に利益のシミュレーションを行ってみましょう。

①受注契約8%、下請契約8%

  • 受注金額(8%税込):1,080万円(税抜1,000万・消費税80万)
  • 下請契約(8%税込):864万(税抜800万・消費税64万)

と言う契約を行ったと仮定しましょう!

  1. 消費税納税:80万-64万=16万
  2. 利益:1,080万-864万-16万(消費税)=200万

と消費税の納税額16万円を考えると、200万の粗利益となります。

②受注契約8%(経過措置)、下請契約10%

  • 受注金額(8%税込):1,080万円(税抜1,000万・消費税80万)
  • 下請契約(10%税込):880万(税抜800万・消費税80万)

と①の契約を消費税を変えてみました。

  1. 消費税納税:80万-80万=0円
  2. 利益:1,080万-880万=200万

とこの場合、消費税の納税額は0円となります。よって粗利益は、200万となります。

③受注契約10%、下請契約10%

  • 受注金額(10%税込):1,100万円(税抜1,000万・消費税100万)
  • 下請契約(10%税込):880万(税抜800万・消費税80万)

と①の契約を消費税を変えてみました。

  1. 消費税納税:100万-80万=20万
  2. 利益:1,100万-880万-20万(消費税)=200万

と消費税の納税額20万円を考えると、200万の粗利益となります。

結果として、消費税率が高くても!低くても!消費税の納税を含めた最終的な利益は、変わることがありません

これはデベロッパーなどの建設工事の発注者も同じで、不動産を販売する時に購入者に負担して貰う消費税と相殺することで損はありません。

消費税率が引き上げられて影響を受けるのは、最終的に消費者となります。

消費税転嫁の対応ポイント

消費税について、正しい知識を得ることで会社の利益に影響がないことが分かりますが…元請業者が正しい知識を持っていなく消費税転嫁をお願いされることがあるかもしれません。

消費税転嫁の対応

消費税は、消費一般に広く公平に課税する間接税です。

また課税のルール「2019年10月1日以降に「引渡し」が行われる物件は、消費税10%が適用される!(経過措置物件を除く)」ので、消費税率引き上げ分を下請業者に負担させる(=消費税転嫁)ことは違法となります。

行政指導による対応

消費税転嫁に関する法律

消費税の転嫁対策として「内閣府:消費税の円滑かつ適正な転嫁の確保のための消費税の転嫁を阻害する行為の是正等に関する特別措置法」という

消費税転嫁に対する調査・取締

消費税転嫁に対する調査・取締りについては、消費税8%に引き上げ時期(平成25年10月)から行政で対応を行っており現在まで行われております。

中小企業庁「転嫁拒否行為に対する対応実績

契約段階での対応

消費税転嫁が行われても、行政に告発と言うことは現実難しいと思いますので事前の契約締結時に、消費税転嫁が行われない様な文言を契約書(注文書・注文請書)にいれる交渉をしましょう。

税抜で記載

金額は、税抜で記載し消費税等は、別途徴収する旨を明らかにする。

例:1,000,000円(消費税別)/1,000,000円(税抜、別途消費税)

消費税率引き上げの文言

消費税等の税率引き上げに対応する文言を盛り込む

例:消費税等は、請負金額とは別途徴収する。なお消費税率については、引渡日における税率を適用する。

など文言を入れ対策を行っていきましょう。

まとめ

建設業者の消費税引き上げに対する正しい知識を得ることで、不安なく消費税引き上げ・消費税転嫁に対応していきましょう。